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ココア共和国

 

​月刊ココア共和国 (電子本&紙の本) について

☆​5月号☆ (2020.04.28)

月刊「ココア共和国」5月号

 あきは詩書工房では、2020年4月1日に月刊詩誌「ココア共和国」を創刊号として、フィックス版と紙の本で刊行しました。ゲストや編集同人による詩、エッセイなどを中心に、詩の理論と方法論を追究しています。

 また全国から詩の投稿を募集し、素敵な投稿作品をたくさん掲載していきます。

「ココア共和国」への投稿詩は同時に、2020年12月31日に締め切られ「第1回いがらしみきお賞」「第1回秋吉久美子賞」へ応募されたものとみなされます。20歳未満の方はそれらに加え「第6回YS賞」の3つの賞に応募したことになります。

 詩の投稿はこちらより。→

 「月刊ココア共和国」 電子本の発売は各ネット書店より。275円(税込)。

 紙の本はココア・ショップまたはAmazonで販売しています。770円(税込)。

目次

◆招待詩
城戸朱理「長い夜」
秋吉久美子「ある日考えたこと」

◆招待短歌
鈴木そよか「春の日の休符」

 

◆5月号投稿詩人のみなさんへ

秋吉久美子

いがらしみきお

◆投稿詩傑作集I
うざとなおこ「空の理想」
吉岡幸一「遮断」
増田陽穂「きいろに晴れた春が来る」
山口波子「合図 トゥ ザ ワールド」
小林「卵焼き」
えばらしょうこ「今の私」
片野翠子「何回忌?」
白神つや「黒い渦潮」
滝本政博「エンプティチェア」
氏家 忍「お祭り」

◆4コマ詩
いがらしみきお「まだ知らない人」
クマガイコウキ「藪医者の言説」
秋亜綺羅「なんで?」
佐々木貴子「ざざぎだがご」

◆投稿詩傑作集II
夏目知佳「春の嘘」
竹田三州穂「私の生きる場所」
髙橋梨咲「揚げ物」
佐藤小雪「ならば」
山路千楽「タピオカに襲われた日」
寺地麻紀子「御伽草子」
やぎなおこ「デッサン」
柿原妙子「期末試験」
叶田明日菜「おんなのこ」
吉原幸宏「雨と傷の来歴」

◆エッセイ
秋亜綺羅「世界の常識は宇宙の非常識」
佐々木貴子「オヤジギャグ礼讃!?」

◆投稿詩傑作集III

西原真奈美「表札」
高木弥生「希望という顔」
夢楽ゆらり「満足」
中マキノ「指胎」
さかきんぐ「笑う大人と、泣く私」
ミナト螢「雨のコンパス」
近藤洋一「マカロニイースタン」
松本末広「初恋」
佐野 豊「部屋」
中原賢治「午前零時」
森本りん「光る犬」

◆詩
佐々木貴子「エデン」
秋亜綺羅「未確認紙飛行物体」

編集前記

 4月創刊号はいかがだったでしょうか。ふたりの高校生、髙橋優花の「あなた」と髙橋梨咲の「私」という衝撃ある2篇の詩から、創刊号は出帆したのでした。「ココア共和国」のURLが youyour.me であったのは、偶然だったでしょうか。

 さて5月号もまた、鈴木そよかの巻頭歌をもらうことができました。鈴木そよかは大学1年生になったばかり。1年間の連載をお願いしています。

「ココア共和国」はとにかく、みんなで詩を楽しもうよ、ということだけが目的の、小さくて薄っぺらな雑誌です。食卓に1冊いつも置かれていて、家族の誰かがパラリとめくり、この詩おもしろいね、なるほどねと談笑になることだけが、わたしたちの夢です。

 どうして食卓なのかというと、詩は、食卓に並ぶごちそうの代わりにはなれないからです。なん日もなにも食べずに、砂漠を這っている、喉が渇ききった子どもにとっては、詩なんかまったく役に立たないのです。ギンズバーグかハンバーグかと問われれば、ハンバーグを取るに決まっているのです。生活があってそのあとに文化があると、文化を担う人は謙虚である必要があります。

 だけどことばは、伝達の道具という「物件」ではなく、暴力という「事件」なのです。「死ね」 と自分のノートの片隅に書かれているのを見て、自殺する子もいます。

 たとえば、けんか相手の頭を、石ころを持って殴ったとします。石は相手の頭蓋骨にひびを入れることはできるかもしれませんが、脳みそにまで届くことはまれです。しかしいっぽうで、ことばは、頭蓋骨に傷ひとつつけることなく、脳に直接堂々と入ってきます。しかも長くとどまります。

 その、ことばの暴力を楽しもうというのが、実は詩なのだと、わたしは思っています。「暴力」は「権力」と違って、上から押しつけられるものではありません。自ら発信できるものです。どんなナイフより鋭く、どんな糸より繊細に。読者の脳に深く長く居座ります。読者に傷をつけることもあるかもしれませんが、読者の脳の中でそれまでなかった新たな感動を生むこともある、ということです。

 5月号ではゲストとして、城戸朱理と秋吉久美子に登場願いました。詩壇の最前線を行くふたりの詩は鋭く、繊細で、実は計算づくです。そこまでなら学者の論文でも可能ですが、ほんとうの詩でしか現れることができない「偶然」を秘めています。ふたりの詩を読んでみてください。きっと、わかるはずです。

 今月も、いがらしみきおとクマガイコウキと佐々木貴子と秋亜綺羅による「4コマ詩」の試みがあります。毎月続けたいなと思っています。すこしずつ形になっていくと思いますので、暖かく見守ってやってくださいな。

 創刊号と違い、第2号ということで、投稿詩をいっぱいもらうことができました。わたしなんかとても及ばない、素敵な詩たちばかりです。関心してうなりながら、うれしく読ませていただきました。ページ数に限りがあり、ほんの一部しか紹介できないのがとても残念です。それでも読者の方々には、たっぷりと楽しんでいただく自信があります。

 掲載も非掲載も各賞の選考とは関係ありません。投稿された全作品は、編集部がいっさい関与しないまま、各選考委員会へ送られます。また「いがらしみきお絶賛」とか「秋吉久美子いいね!」などが付けられた作品は、選考委員からメールで情報を得たものです。この選考委員はこんな詩が好みなんだな、くらいのヒントになるかもしれません。

 ますますの投稿をお待ちしています。

(秋亜綺羅)

以下は電子版のみに収録

◆投稿詩佳作集

結咲りと 「おわりとはじまりのあいだ」

文音 「うちゅうのうちゅう」 

上下 「Yの夜警」  

中川達夫 「ようせい」

菅 弥生「3月7日のドキンちゃんだより」 

iidabii 「僕の住む街に塔が建った」 

齊藤 進 「夜」 

灯火ほたる 「人形」 

檻ひづめ 「うるう」 

入谷 「あたまがさかさ。」 

丘白月「髪を切った夜」 

はやしゆきの 「シマノウタ」

あち 「目薬、白目、本当の笑顔」

田村きみたか 「少年と恋」

露野うた 「ガールズルール」

おゆみ 「想い出の価値」

a.kiko 「孤独Ⅰ 俺を生かすもの」

まなほ 「オアシス」

可織てん。「薄氷」 

藤田 聡 「黒子」

小野みふ 「トッパ」 

仲原彩恵 「悲しみさんへ」

清水将一 「古いCD」  

池戸則子「コロナの春」 

一期崎月子「あなたに会いたくなりました」

池田伊万里 「モノクローム」 

渡辺八畳 「皿が溶ける日」 

中島有城 「海みたいだ」

萬 幸「自由な人。幸せが来る人。」  

森田 直 「シャワー」

麻川真由子「ばら」 

林やは 「愛情の詩」

珈琲ミル 「ワンチャンワンチャンス」

東ノ緑夢 「鳩」 

阿部吉友 「老残の門」

石村利勝 「結尾」

よしのぶ 「こーひー」 

寺林隆一 「あさり」 

川島新士 「荒野へ」

木村梓紗 「音づれ」

ころちゃん 「こころの耳」 

リン ジャツン 「未来があるがいい」

幻ノ月音 「蛇」

山岸信久 「ばちらぬんど」

竹鳥光妙子 「大人のたまご」 

イリオモテイリオ 「毎夜」 

サトウアツコ 「そのままで」

永瀬 鞠 「初日の出」 

ななな 「ちっぽけな自分」 

素潜り旬 「開かれた窓を描く」

ヱ昊 稀 「みち」

前田信夫 「銀色の海」 

佐藤陽平 「口の上下左右運動で」 

石黒峻登 「こころの畑を耕そう」

村岡大二 「にじ」  

もちこ 「春の風の日」

猪熊根太 「晴男 雨女」

編集後記

 風薫る5月となりました。新型コロナウイルス感染症によって、様々な制限を余儀なくされた毎日。それでも小鳥たちは声高にさえずり、花々は申し合わせたかのように咲きほころんでいます。4月に大きく花開いた月刊「ココア共和国」。創刊号に引き続き、5月号も元気よく刊行です。瑞々しく可憐な言葉たちが「詩で何ができるか」という問いに、積極的に答えてくれています。

 ところで、濃厚接触という馴染みのない4文字がわたしたちの生活に浸透しつつあります。見えないという怖ろしさに誰もが改めて立ち止まり、警戒せざるをえない状況になりました。すべての人と人の〈あいだ〉に漂う緊張。当たり前に触れてきた家族、ドアのノブ、スイッチ、恋人、パソコン。いま、同じ仕方で見えないウイルスに触れているのでしょうか。いまだからこそ考えてみたいです。見えないものへの恐怖は、見えるものへの恐怖を凌駕するのか、しないのか。

 今回も「ココア共和国」に全国のみなさんから、たくさんの投稿をいただきました。すべての投稿作品を掲載できなくて、ごめんなさい。5月号は紙の本には投稿詩傑作集として31人の作品を掲載しました。さらに電子版には紙の本31篇の作品に加え、57人の作品を投稿詩佳作集として掲載することにしました。5月号は合計88篇の投稿作品を掲載したことになります。想像以上に読み応えのある贅沢な1冊となり、とてもうれしく思っています。

 実際、一目惚れともいうべき投稿作品が多くありました。詩の書き手というより、むしろ詩を愛好する一読者として、よろこびのうちに繰り返し読みました。特に心を鷲摑みにされた作品を何篇かご紹介します。まず、うざとなおこ「空の理想」は、「空」という言葉の周辺を実に哲学的に精緻に作り込んでいるのに、これ以上でもこれ以下でもなく無駄がない。なぜって空を飛ぶには軽くなければなりませんから。また吉岡幸一「遮断」も極めて読ませる作品であると思いました。遮断機ではなく遮断であることが日付変更線のない日々を象徴しています。そこここに既視感を漂わせつつ、未知の世界をも展開できる筆力です。山口波子「合図 トゥ ザ ワールド」、冒頭から一目惚れ。この調子でずっと分かち合っていきませんか。さらに片野翠子「何回忌?」のスッキリ分からない場の設定が、言葉ひとつひとつの跳躍を促していると感じました。山路千楽「タピオカに襲われた日」、小林「卵焼き」、やぎなおこ「デッサン」、柿原妙子「期末試験」、夢楽ゆらり「満足」、繰り返し読みました。いずれ握手したい思いです(濃厚接触は禁止でしたでしょうか?)。

 幅広い年代の方々から投稿いただいています。不思議なことですが「詩ってこんなに面白かった?」と思わずにはいられない。今回はティーンエージャー数名の投稿作品も掲載です。これまた繊細なだけではない、強化ガラス細工というべき作品でした。これからも投稿してください。楽しみにしています。

 おそらく小さな呟きから生まれた作品が多いのかもしれません。完成度の高さに圧倒されることはよくありますが、整合性より破綻寸前、崖っぷちとでもいうべき全力の作品に魅力を感じます。人間って不思議ですね。予定調和より冒険が好きだなんて。

 今後も鳥肌が立つほど驚きたいです。言葉でしかできないこと、見てみたい。こちら編集部、好きなものなら擦り切れても何度も読み返すタイプです。

 春の風が頬にも髪にも触れていきます。月刊「ココア共和国」読者のみなさん、今回、多くの素敵な詩に触れていただきました。さて。詩はみなさんの何に、どうやって触れたのでしょう。わたしはそれぞれの作品と濃厚接触、でした。 

(佐々木貴子)

​<執筆者

☆秋亜綺羅(あき・あきら)
詩人。1951年生。宮城県在住。
詩集に『透明海岸から鳥の島まで』(思潮社・2012)、
『ひよこの空想力飛行ゲーム』(思潮社・2014)など。
エッセイ集に『言葉で世界を裏返せ! 』(土曜日術社出版販売・2017)。
丸山豊記念現代詩賞。

☆秋吉久美子(あきよし・くみこ)
俳優、歌手、詩人。1954年生。
『十六歳の戦争』『赤ちょうちん』『妹』など主演多数。
アジア映画祭主演女優賞、日本アカデミー賞優秀女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞、モナコ国際映画祭主演女優賞など受賞多数。
詩集に『いない いない ばあ』など。

☆いがらしみきお
漫画家。1955年生。宮城県在住。
『ネ暗トピア』『ぼのぼの』『BUGがでる』
『3歳児くん』『かむろば村へ』『I』など多数。
日本漫画家協会賞優秀賞、講談社漫画賞、小学館漫画賞など。

☆城戸朱理(きど・しゅり)
詩人。1959年生。神奈川県在住。
詩集に『不来方抄』(思潮社・1994)、『幻の母』(思潮社・2010)
『漂流物』(思潮社・2012)など多数。
歴程新鋭賞、芸術選奨新人賞、現代詩花椿賞、岩手日報文化賞。

☆クマガイコウキ
映像作家・劇作家。1961年生。宮城県在住。
映画『ぼのぼの/クモモの木のこと』監督・脚本。
児童劇団AZ9 ジュニアアクターズ座付作家。
長編紙芝居『蛇蝎姫と慚愧丸』脚本、演劇『タルタロスの足湯』脚本など多数。

☆佐々木貴子(ささき・たかこ)
詩人。1970年生。宮城県在住。
「詩とファンタジー」大賞、第26回詩と思想詩人賞。
第7回びーぐるの新人。
詩集『嘘の天ぷら』(土曜日術者出版販売・2018)にて第30回歴程新鋭賞受賞。「ココア共和国」編集。

☆鈴木そよか(すずき・そよか)
歌人。2001年生。宮城県在住。大学1年生。
第16回宮城県高等学校文芸作品コンクール短歌部門最優秀賞。
第11回角川全国短歌大賞特選 佐々木幸綱選。

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